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市内に61のアートが点在…『奥能登国際芸術祭』石川・珠洲市で23日開幕 世界から59組参加

9月23日から珠洲市ではじまる奥能登国際芸術祭。
3回目となる今回は14の国と地域から過去最多となる59組のアーティストが参加します。石川テレビでは新作を手がける2人のアーティストに注目し、作品に込めた思いや見どころを伺いました。
空や海を反射してきらめく海上の鳥居。時に優しく、時に荒々しい珠洲の波や風を思わせる石の彫刻。奥能登国際芸術祭の舞台、珠洲市には61の様々なアートが点在しています。
珠洲市の狼煙漁港に置かれた1台のピアノ。芸術祭の作品の1つ、「アイオロスの広場」の制作現場です。
音楽家小野龍一さん:糸をみなさんで触って演奏していただけるんです。ピアノって基本的にひとりがやって上手いか下手か既存の価値感覚に支配されている楽器ですけれど、自然と人と場所と、あるいはそこに来た人同士がセッションできる広場っていうコンセプトで作っています。
使われたのは珠洲市の保育園にあった60年以上前のピアノ。ピアノからは漁師が使うロープをイメージした黒い糸が伸びています。作品にはギリシャ神話に登場する風の神、「アイオロス」の名前が付けられました。
小野さん:ピアノの中を通り抜けて風の音がなる時があるんです。狼煙の環境自体がある意味ソリストで狼煙の音響を伝える装置として制作しています。
訪れた人は、音となって奏でられる珠洲の自然とのセッションを楽しむことができます。
小野さん:僕自身、コミュニケーションが得意じゃないんですけど、楽器を通すとコミュニケーションが別の形で行えるようになる人同士が開き合っていく、そういうコミュニケーションが生まれていけばいいなと思っています。
芸術家弓指寛治さん:(オファーがあった)最初は申し訳ないですけど『珠洲』って漢字さえ読めなかったです。どういうあれなんやろって検索してっていうところから始まって…
弓指寛治さんが絵にしたのは、珠洲を巡る中で知った「南方寳作さん」の物語です。1922年に珠洲で生まれた南方さんは満蒙開拓団として満州に渡った経験を手記に残していました。
弓指さん:マハカム川っていう川で夜、歩哨に立っている文章が出てくるんです。日本は戦局が悪くなっているので日本のことを思って空を眺めて感傷に浸っているのを元に描いた作品です。
手記をもとに描かれた数十枚のパネルを巡れば、当時の物語をたどることができます。
弓指さん:戦争に行って生きて帰ってきたから文章がある、それをもう一回、絵という形で見てもらえるようにしようということを大事にしているので、ひとりの兵士がどういう風に生き抜いたのかを見てもらえたらと思います。
弓指さんが携わった作品はもうひとつ。珠洲の人に聞いた「小さな物語」をもとに下絵を描き、地元の人が縫ったランチョンマットです。展示会場は空き家を活用しました。
弓指さん:それぞれは本当に些細な話ばっかりなんです。いろんな人の話を読んでいくうちに自分にも似たような経験があったなぁとか形を変えた追体験になるような気がしています。
アートを通して珠洲の自然や文化、その地に生きた人々の物語に触れる奥能登国際芸術祭。いよいよ開幕です。